ある少女が、絶対的に崇拝している美少女の首筋にニキビを発見し、そんなことはあってはならないと、意識が遠のき、発作的に殺してしまったという、小説の話を同居人としていたのだけど、そういう美少女のような存在が自分たちにいるのかという問題。
同居人はプリンスの長らくのファンで、前に、新譜を買うと抽選でミネアポリスにあるプリンスの自宅だかプライベートスタジオだかに招待され一夜限りのライブに参加権、というのがあり、普通なら、どうせ当たるわけないし送ってみてもいいかなという程度のもののはずだが、同居人は違った。もし当たってプリンスを目前にした時のことを想像すると耐えられないので応募を見送ると言ったのだった。あほなのか。
じゃあ翻って自分の問題。自分にも憧れのスター・アイドルの一人や二人いるけど、仮に『インディ・ジョーンズ』に出てた頃のリバー・フェニックスを目前にした場合、極度の緊張のあまり卒倒するかといえば、たぶんしない。人見知りではあるし相手は異国の俳優なのでコミュニケーション困難ではあるはずだが、「大好きでしたありがとう」くらいは言えるだろうと思え、首筋にニキビを発見して精神が激動するというたぐいの、相手を人として見れないほどの崇拝とは質が違う。よく考えてみればそのような対象がいたことがなかった。
なんとも寂しいことだよなあ、某になれたら死んでもいい、なんて考えたことがないのは、なんて、涼しくなった夜道を歩きながら思ったのだけど、ふと、「首筋等にニキビ等を発見したらショックな対象」だけはいると気付いた。
日本のシンボルであるその人の、肌のコンディションがわかるまで近づいた場合、相当クラクラするだろうなーなどと思った。