『雨』

某配給会社の知人から、面白いから観てみてと渡されたDVD、マイケル・カルサビナという監督の『雨』を観た。『rain』かな。リージョンコードが1。Macで何とか再生。
インディーズの映画という予備知識しかなかったものの、のっけからウィノナ・ライダーが出ていて驚いた。最近見ないと思ってたら低予算モノに出ていたのかと思うとキュンとした。ウィノナ好きな自分なのであまり冷静な感想が持てないのかも知れないけど。
果敢にもCGを使っていない(たぶん)SFで、廃虚の濡れた壁とかどうやって撮ったのだろうと思わせるテカテカした黒みにゾクっとくる。美術がおそろしく凝っていて、画面内のどこかが必ず暗く湿っている。衣装とか普通なのだけど完全に異空間。水虫のスタッフは大変だったろうに。

お話しは、人口が増えすぎて懸念を抱いた政府が、みんなセックスしすぎるのが原因だろうから、まあ恋愛からそれとなく管理しましょうよ、と特務機関に命じて「人の感情を削ぐ雨」を開発させる。この雨に当たるとエモーションがなくなって淡々とするようになる。考える力も弱くなるのか誰もこのことに気付かないんだけど、病気で家から出られない少年が異変に気付いて、幼なじみの少女にずっとこのことを語って聞かす。10年くらい後、大人になった少女(ウィノナ・ライダー)は少年が亡くなった瞬間にようやく「感情が枯れていること」に気付いて、特務機関とコンタクトをとることを模索しだす。そいてついに雨の工場に乗り込むことに成功して…、という感じ。

役者が全員良くて、キモとなる「無感情」な感じのまままったく普通の生活を続けている。異様なまでの淡々さが絶望感のようなものを醸し出して、逆に観客だけが泣けてくる、一人だけエモーションを獲得するウィノナがモンスターのように奇異にうつる。
物語も決してハッピーな終わり方をせず、陰鬱な画もあいまって圧倒的な無力感に塗りこめられて終わる。ああこりゃあアメリカじゃ売れないわという感じ。今のこの鬱な時期に観るんじゃなかったと少し後悔したけど、よく考えてみれば傑作には違いなく、こうやって感想を書くことを試みた次第。

マイケル・カルサビナのスペルが確認できなくて検索できなかったけど、なんか共感できた作品。でもこの監督ってまだ二十代前半なんだそうで、嫉妬せざるを得ない。