歯医者に行った。
散髪した。
来月、韓国に行く可能性が高い(いや、よっぽどのことがない限り行くんだろうけど、最近主催の方から連絡がないし、自分が知らない間にとりやめになったとしても何ら不思議はないのだけど、行けたら嬉しいし、念のため)ので、パスポートをとらないとならない、その、10年もたせなければならない写真を撮るのに、少しでもましな風采をしていたいがため。
パスポートは25の時に一回とったきり、失効したきりである。初めて賞をいただいた映画『手の話』が、ロンドンの映画祭でかかるという話(もっとも映画祭の名前がいまだに判然としない、実在したのかどうかもわからない)で、監督本人を招待してはくれなかったのだけど、なにしろこんなことは初めてなので興奮し、海外での反応をこの目で是非見たいと思い立ち、当時働いていた会社ではまだ新人で有給をとるのも憚られたのだが、無理にとって、同僚のK君に渡航チケットの手配を手伝ってもらい、「正直、おすすめしない」というP社の偉い人の忠告が聞こえないふりをして、さあ後は行くだけ、というところでお金がないことに気が付いた。
そこでクレジットカードである。クレジットカードさえあれば、当座の現金がなくても何とかなるし(働いて返すのだ)、噂によればカードは時に現金より便利とのこと、自分は渋谷の某クレジットカード開設窓口に行き、言われた通りに書類を書いたりして、「では数日後に送ります」という言葉を信じて待っていた。会社の総務の女性あてにカード会社から確認の電話がかかってきたらしいし、自分は「地球の歩き方」とか買ってきて、成田空港への行き方を調べたり、その向こうにあるロンドンに思いを馳せていたのですが、結論から言えばカードの審査に落ちたためにロンドンには行きませんでした。「言ってくれればカンパしたのに」という暖かいお言葉も頂いたのですが(ほんとうにありがとうございました)、自分は各所に謝ったり取り消したりですっかり凹んでしまって誰かに言うどころではなかったのです。
以来、クレジットカードを作っていないし海外にも行っていない。
というわけで韓国行きは非常に楽しみで、楽しみすぎて髪を切りすぎるほどで、自分が住んでいる神奈川県の、具体的には横浜に何度か申請にでかけなければならないことも全く苦にならない。


おしらせ。
キネマ旬報11月上旬号に、市川準監督一周忌特別企画として、『トニー滝谷』のメイキング『晴れた家』について寄稿させて頂きました。よろしければごらんください。